吾輩は出会ったのである。
タイトルの通り、今日私は女に出会った。
出会った、といってもマッチしてメッセージをやり取りして、そしたら割とすんなり会うことになって、そして出会った。
要は出会い系だった。人生で初めて出会い系でマッチした女にリアルであった。
大学生の読者に言いたい。出会い系では年収がすべてであると。
私は大学生のときにも出会い系をやっていたが、ほんとーーーーーーーーーーーーに、マッチできなかった。
私のゼミの同期で身長が180センチあったやつは二回ぐらいデートできたらしいから、身長が高かったら、あるいは大学生でもやってもいいのかもしれない。
しかし、佐藤健と同じ身長の私には、全く持って出会いがなかった。マッチして数回やり取りしても、いざ会ってください、となったらドタキャンか、そもそも会うのはちょっと……と言われるかどちらか。
しかし、しかしだね、読者諸君。
吾輩が年収の欄に「600~」と書いたらどうだ。
マッチしまくったではないか。あとメッセージも向こうからガンガン来た。で、今回の出会いにつながったわけだ。
ちなみに吾輩の年収はこれよりちょっと高い、けど年収の欄に「800~1000」とか書いたら銭ケバ的なレディーが競うで怖くてやってない。
自粛も開けた大阪で三番目くらいに大きな都市の、商業施設の一角で私は待っていた。
そしたら、彼女が現れた。身長が150センチくらいで、いわゆるロリ系のファッションをしていた。
そこからカフェに行っていろいろと話しをしたのだが、彼女の話が猛烈に面白かったため、今回筆をとるに至っている。
「もう、出会い系とか疲れたんだよね。アプリは5,6個やった。街コンにも、相席居酒屋にも行った。みんなごみくずばっかだった」
ごみくず。
彼女と一日過ごして、その言葉を10回以上は聞いた。私はごみくずの話をひたすら聞いた。
「アプリはヤリ目ばっか。すぐに家かホテルに行こうって言ってくる。相席もごみ、でもね、一番のごみは街コンだよ」
なんで、と聞いた。彼女の口からは絶え間なくごみくずたちの悪口が流れていった。それは私に、「千と千尋の神隠し」のワンシーンを思い出させた。泥の団子を口にしたカオナシが、吐しゃ物をとうとうと戻すシーンだ。
彼女いわく、街コンにいる男たちはだいたいが派遣か日雇い労働者らしい。彼らはまず、普通の会話ができない。そして、清潔感もない。ぼっさぼさの髪で、街コン会場までくる。
加えて、街コン会場は食べ放題とか歌っているが、実際の料理はほんとーーーーーーーに少ない。本当に少ない。らしい。
「あれは食べるようじゃなくて、会話が詰まったときにつまむ用だから」カフェで出てきたおしゃれ腐ったケーキを切り分けて、彼女は言った。
で、街コンの男たちはその少ない料理をバクバク食べるらしい。
「これ食べていい? とか何にもないの。ひょいって、食べるの。で、いらないもの押し付けてくるの」
それを思い出してか、彼女は地獄みたいな顔をした。
「でも意外だね。そんな街コンが派遣とか日雇いが多いって、だってあれって値段そこそこするじゃん」と私は素直な疑問を口にした。
「派遣とか、日雇いだからよ」と彼女は言った。
「普通、そう思うでしょ。派遣とか、日雇いとか低所得者は、参加料の高い街コンになんか来ないって思うでしょ。違うの。逆なのよ」
意味が分からなかった私はどういうことか尋ねた。
「つまりね、派遣とか日雇い労働者とかって、普通に生きてたら女の子に出会えないのよ。だからね、彼らが出会うためにより、お金を使う必要があるの。普通の仕事していたら、職場とか、なんかのサークルとかで出会えるでしょ。つまり、出会うためのコストは0。出会いがなかったら、こういう風にアプリで出会うしかないでしょ。金を出すしかないの。けれども、アプリに使う程度の金では出会えない男たちがいるの。それが彼ら」
「カーストが下に下がれば下がるほど、女の子と出会うために使う金額は大きくなるの。だから、出会いの場に使うお金が多くなればなるほど、地獄になっていくわ」
なるほど、と思った。それは一理あったし、おそらく真実なのだろう。
そしてなんだか、とても悲しかった。彼女はその後も、地獄みたいな体験をいろいろと教えてくれた。彼女自身はかわいかったが、私はなんだかひどく疲れてしまって、電車に乗った。
「お腹がすいた」
彼女と晩御飯を20分前に食べ終えたはずだった。けれども、気が付いたらそういっていた。
私は本日、私がいた世界がいかに幸福で、笑顔に満ちた世界か教えられた気がする。世の中には、いろいろな違う世界線があるものだ。
今日もいい日になりますよう。