他の大学生の時にしなくてもいいことはこちら!↓
✔休日
今日は休日だった。久しぶりの2連休だったから、実家へ帰ってきてしまった。
コロナがどうとか言っているが、毎日毎日飽きずに外食をしに来るやつらを目の前で見ているので、自粛という概念が麻痺している。
所得格差とコロナの罹患(りかん)率が比較され、コロナは低所得者に広がる病気であるという記事も読んだ。
その時はなんてひどい論理の飛躍なんだと思ったが、目の前で緊急事態宣言の中外食を食べにくる人々と以下のような記事を読むとあながち間違いでもない気がしてくる。
閑話休題。
✔わたしは大学時代にどうしても海外に行きたかった。
どうしてもどうしても、早く早く行きたかった。ある種の熱にうなされていた。外に行けば、何かが見つかると思いたかったかのかもしれない。
結果として、三年という周り道を経て就活することになるのだが、それをお勧めしないのは以下の通りである。
あなたが高学歴ならなおのこと留年するなと言いたい。 三留の戯言 - 吾輩は芥川賞を全部読む。
そして、海外に行きたくて、行きたくて仕方がなかったために、「ワーキングホリデー」「学部(交換)留学」「語学留学」の三つを経験した。その時の体験をもとに綴ったものがこちらである。
今日から少しだけ、大学時代のワーキングホリデーの経験を語っていこうと思う。
ワーキングホリデーの制度、概要は留学斡旋業者などの他サイトが詳しいから他に譲る。
✔12月の夏の夜、下着姿で通りに立つブロンド美女
忘れもしない。わたしが初めてオーストラリアに降り立った日だ。
ワーキングホリデーの申請はあっさりするほど簡単に通った。
わたしの点数はTOEICでいうと700点ぐらいではあったが、ワーキングホリデーについて書かれているオーストラリアのサイトの案内を丁寧に、手順を追って手続きをした結果、わたしにはワーキングホリデーの許可が下りた。
シドニーの○○空港は、地下鉄のアクセスが割と良かった。
そのまま、Wi-FiがあるところでHotels.comで予約した安ホステルへと向かう。*1
駅を降りると、そこは夏だった。ガタイのいい人々がそこかしこ、半そでで歩いている。
ホステルがあるとされる地図の場所まで、ドコモのデータ通信をその時だけオンにして服ばかりの軽いスーツケースを引いていた時だった。*2
目の前に現れてのは下着を着た女。ブロンドの。ボンキュッボンの。
10㎝はありそうな、白くどきついピンヒールも履いている。
あっけに取られている表情が出ていたのだろうか。下着のブロンド女がこっちを見て笑い、看板を指した。
SHOW GIRLとある。どんなお店か気になる読者のために、一応リンクを貼っておく。以下。
The World Famous Show Girls | Sydney Strip Club
これは後になって調べてみてわかったことだが、わたしの初めてのオーストラリアでの住処、キングスクロスという地区は南半球の歌舞伎町と言われるくらい、治安がわるく、風俗店などが多いところらしい。
分けのわからない顔を浮かべているアジア人に、セキュリティーガードだったのだろう、曙のような体をした黒人がこっちに来て笑って言った。
――ストリップ・ショーだよ。
――ストリップ・ショー⁉
ストリップ・ショー、があまりに日常とかけ離れていたために、繰り返したわたしに、黒人の曙が身振り手振りで説明してくれる。
――女が下着で、下着を脱いだりして踊るんだ。わかる?
ああ、あのストリップか。とわたしの中で合点がいったところで、下着の女が声をかけた。下着の女のどこを見ればいいのか。伸長はわたしよりも高かった。10㎝以上あるピンヒールのせいもあるのか、大分上から見下ろされている。
――今日、オーストラリアに来たの?
彼女はわたしの引いているスーツケースを指さして言った。
――そうです。
ニコッと下着女が笑う。妖艶な雰囲気から一転、子供のような笑顔だ。わたしが自分でスーツケースを持つ必要もない裕福な経営者か何かだったら、その場で入店を決め込んでいたと思う。
――ようこそ、オーストラリアへ。
オ~、という官能的な感嘆詞の後で、彼女は言った。黒人の曙は隣で笑っていた。
わたしのオーストラリア入りを祝ってくれたのは、道端のストリップ嬢だった。
こういう時、なんといえばいいのか分からずに、「see you again」と言うと、曙とストリップ嬢の両方が笑った。
自分の英語で笑って(笑われたのだが)うれしい気持ちで道を進んだ。
結局ホステルを見つけるのは簡単だった。そこだけ、建物がティファニーブルーだったからだ。といっても何ら高級なティファニーブルーではなく、素人がペンキで塗りたくったのが分かるような外見だった。
わたしが中に入ろうとすると、隣のホステルに、わたしよりも二まわり程大きいオーストラリアの警官が三人程、入っていった。
ポリース! という声が聞こえる。
急に安っぽく見えてきたティファニーブルーの建物に入ると、すぐ目の前に受付があった。
が、誰もいない。
――あ、今日チェックイン?
入り口の右側はすぐに階段、左側には共用スペースのダイニングがあった。そのダイニングでパスタを食べていた紅茶色の肌をして、ハードロックカフェのTシャツを着た女がわたしに話しかける。
――そう。
―オケイッ! じゃ、パスポート出して。
すぐに受付の向こうに回った女は、ぼくのパスポート手に取った。
――隣、なんかポリスが入ってたけど。
――ドラックでもやってるか、何かが盗まれたんじゃない? あなたも、パスポートと現金は鍵付きのロッカーに入れといてね。
盗みが結構あるのよ。キングスクロスだしね。
わたしの真っ赤なパスポートを見ながらパソコンに何かを打ち込み、女は言った。
――シドニーは初めて?
パスポートをわたしに戻して彼女は言った。その時に気が付いた。彼女は手のひらの下、ちょうどリストカットをするようなところに、羅針盤のタトゥーがあった。
――シドニーというか、オーストラリア自体初めて。
――わぁ、ようこそ!
紅茶色の肌から、白すぎる歯がのぞく。わたしはオーストラリアに来た。