吾輩は芥川賞を全部読む。

読んだ本の書籍レビューが主です。作家になりたい大学生。来年から働きます。

『青いポポの果実』 三国美千子  あらすじネタバレ 感想


新潮 2019年 12 月号 [雑誌]

 

 

『青いポポの果実』

 

 

昨年『いかれころ』で新潮新人賞。そして同時に三島由紀夫賞も受賞した三国美千子さんの新作が『新潮 12月号』にあったので読みました。

 

 

 

1. 感想

これ、芥川賞候補行くんじゃないですかね?

 

先に言ってしまうと、古市さんの『奈落』よりも全然面白かった……

古市さんの『奈落』も三国さんの『青いポポの果実』も両方家族のことが描かれている物語で、どちらも家族が少しおかしいのですが、三国さんの描き方のほうがより立体的に家族が描かれていて、古市さんの『奈落』に出てくる家族はどうしても薄っぺらく感じてしまう。凄みがない。

 

もし、古市さんが芥川賞候補になって、三国さんがならなかったら僕は文藝春秋を爆破しにいこうと思う。

 

それくらい面白い「青いポポの果実」おすすめです。

 

ただ少し描写が丁寧ではないので追いづらい。

丁寧ではないという言い方は語弊がありますね。一つのシーンにつき、描写が短いです。

つまり、「どこで」「だれが」「どうなって」「どんな顔をして」「どんな気温で」「どんな天気で」「どんな季節で」がそれほど文字情報として与えられていない。

そのため逆に150枚でこれだけ重農な内容になることが可能だったのでしょうが、やはり少し読みづらい感は否めない気が……

でも読書に慣れている人なら全然平気だが、普段から読んでいる人ではないとドロップアウトしそうな感じ。

村上とは真逆ですね。あの人は一つのことに対してしつこく何度も描写を繰り返すので。

 

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  F*は目を細め、長いあいだ僕の顔をまっすぐ見ていた。それから両手をテーブルの上において組み合わせ、関節をぽきぽきと鳴らした。正確に十回。まわりのテーブルの人々がみんあこちらを振り返るくらいに大きな音がした。三日前のバゲットを膝で折るときのような乾ききった音だった。男女の別を問わず、それほど大きな音で関節を鳴らすことのできる人はそんなにいない。

 『謝肉祭(Carnaval)』 村上春樹 文學界 12月号

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 2.あらすじ(ネタバレあり!)

 

 主人公の「僕」こと山岸七聖は妹の千由(通称ユキ)と一緒に「スパイごっこ」なる、隣人の家を盗み見る遊びに夢中だ。ある日「ポポの木」と僕らがなづけた木がある裏庭に面した家には、半年ぶりに引っ越しして人がやってきた。

 

僕はママのことを雌犬とよんで、軽蔑しているけれども、小学五年生の「僕」の体はどうしようもなく雌犬の体に近づいていく。

 

 パパは「僕」のことを写真にとって児童ポルノとして売ってお金を得ている。そのモデルを断ることはできたのだけれども、ママへの奇妙な復讐心が、物扱いされる嫌悪感に買って、僕は数年後に梅田のアダルトショップで自分の写真を見つけることになる。

ママは知っているけれども、休みの日にパパが家にいるよりはましだから、「僕」が写真を撮られるのを止めない。

 

 ある日「僕」は妹のユキと、そして母と一緒に裏庭に越してきた倉橋さんの家に挨拶にいって、僕とユキはそこで倉橋麻子という高校生とその弟と少し遊んだ。後で気づくことになるのだが、あのとき「僕」は麻子さんが好きだった。

 

 ある日「僕」の家には、新しく小学五年生の担任になった水谷瑞枝がやってきた。母に「一度専門機関で診察を受けるべき」だとアドバイスしたらしい。

 なぜか「僕」は妹のユキと自分たちの置かれた状況について話すことはなかった。妹のユキはたまに布団で「僕」にキスをする。

 

 またある時期、担任の水谷瑞枝の差し金で、僕は医者に連れていかれた。衣服を脱がされ、股を広げられて、僕は女の子である診察をされる。僕は悪魔に憑かれたエクソシストみたいに、裸のまま医院の診察室をめちゃくちゃに破壊した。

 

 ユキはある時期まで、家族の中で最も成功するだろうと思われていた。大きくなったらひとかどの人物になるだろうと。ある日、いつものように「スパイごっこ」をしていると、のぞいていた家のうちの一つで、痴話げんかが行われているのを見る。ヨーコという女が打たれて警察に電話をかけようとする「僕」にユキは「やめときな」という。

「ヨーコ死ぬで」

「観察対象にはかかわれん主義なんよ」

「僕」はここでユキが、まるでバッタやダンゴムシを観察するように隣人を除いていたことを知った。

 

 

 ポポの木がある倉橋家には赤ちゃんがいた。誰の赤ちゃんなのかはわからない。ただひょんな会話から僕は麻子がもう赤ちゃんを産めないことを聞く。十七歳の彼女のへその下には、縫ったような跡があった。

 倉橋家に遊びに行った際、「僕」はポポの木の果実を麻子に差し出される。その果実はまだ熟れてはいなく青く、「僕」は食べることを拒否した。

「いらん」

「ポポなんか果物やない。毒があって、子供がうめなくなるらしいよ」

 それを言っても麻子に無理やりに口に含まされる。

「僕は、大人になっても絶対に子供なんて生まないから平気屋で」というと麻子も

「私だって平気。一回お腹を切ったせいで、もう産まれへんもん」

 

「首でもつって死んでくれない? いなくなったほうがよっぽど親孝行よ」

 雌犬(母)にそういわれた「僕」は荷物の一切合切を庭に投げられた。

 土曜日が来て、ユキがいないのに気が付いた「僕」はユキの観察日記を見る。「団欒」という文字がところどころに書いてあった。それは観察対象に家にあって、僕らの家にないものだった。そして一週間に一度、¥の文字がかかれているのも見つける。

「僕」は全身の力が抜けてどうにかなってしまいそうだった。

アパートの一番奥の部屋、通称チャールズ夫妻と「僕」が名付けた夫妻の部屋で、ユキは裸になってアニメを見ていた。雌犬がアニメは一日30分とした愚かな教育の結果だ。ずいぶんと派手にチャールズはやらかした。ユキの真っ黒な髪の毛にも濁った白い液体は付着していた。

 

「僕」は溺れて死のうとしたけれども、結局は助けられた。助けられて麻子の家に連れていかれて、麻子と二人っきりになって「僕」は、裸のまま麻子の体に絡みつく。

「目が覚める。あなたは子供のまんまやけど、次のものになってる」と麻子が言った。

「僕」は自分の中の雌犬にサヨナラを言った。

 

「僕」は小学六年生になると「わたし」になった。胸が膨らんできて「わたし」は疑われる余地もなかった。

 

「わたし」は肉と骨だけに痩せこけてしまうまで、父に犯されていた。それは台風の日に屋根を身にきた祖父がそこにある大量のウィックや制服を見つけるまで続いていた。

 

「わたし」逃げるように家をでて結婚する。そうして子供時代に何かが壊されしまった「わたし」はしかしいずれ夫である男を本当に愛し、また受け入れることができるのだろうと思う。彼女は辛抱強く、優しい人だから。 

 

 その時にこそ「わたし」は、あの十歳の自殺未遂を図ったあの日に、麻子という十七歳の少女がわたしにもたらしさ優しさの正体がわかるのだろう。

 わたしは知る由もなかった麻子のやさしさを思い、彼女のそばにいて、守ってくる人が一人でも多く、と祈るのだった。