マザコンだと、昔の彼女に言われたことがあります。
いや、直接言われたんじゃなくって、マザコンだと彼女が述べていたという趣旨のSNSのつぶやきを共通の知人に提示されました。
まぁ、結構な言われようでひどかったですね。それなりに傷つきましたよ。ええ。
自分がマザコンなのかはわかりませんが、(一人暮らしをしていますが、ここ一年ほどは実家に帰らず、半年に一回くらい母に電話はします。あと、誕生日プレゼントを母にあげたことは、大きくなってからはありません。おめでとうのメールはしますが)
まぁ、女性に対して病的に気が使えないところがるので(これは本当に改善したいのですが)
それが、その彼女さんには、
「どうせ、君のお母さんなら笑って受け入れてくれるから。お母さんみたいな人がいいんやろ」的なことになってしまったようです。
マザコンってすごく評判悪いですよね、でもおばあちゃん子ってすごいイメージいいですよね。
不思議。
まぁ、今回はそんなマザコンにも関係する、いわゆる「両親の愛情」がテーマになっている村上春樹の作品を紹介します。
この東京奇譚集という短編集に収められている『品川猿』という作品です。
持論なんですが、そして異論は認めますが、村上春樹は短編小説が本当にいい……!
「蛍」「納屋を焼く」そして、今回の『東京忌憚集』に収められている五作……
そして忘れてはいけないのが、「四月の朝に百パーセントの女の子に出会うことについて」
これも最高なんですよね。
また紹介したく存じます。
まぁ今回の「品川猿」これは私の大好きな物語です。
と、いうのもこの物語は、物語世界を超えて、現実に生きる私におおきな気づきをもたらしてくれたからです。
以下、あらすじ(今回はネタバレしていません)
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安藤みずき(結婚前の名前は「大沢みずき」)は、1年ばかり前からときどき自分の名前が思い出せなくなった。相手から出し抜けに名前を尋ねられると、頭の中が空白になってしまう。名前がどうやっても出てこない。夫はみずきより4つ年上の30歳で、製薬会社の研究室に勤務している。二人は品川区の新築のマンションに暮らしている。
ある日、品川区の広報誌を読んでいるときに、区役所で「心の悩み相談室」が開かれているという記事が目にとまった。みずきは区役所に赴き、カウンセラーの坂木哲子の面談を受ける。坂木に「名前に関連して思い出せる出来事はあるか」と問われ、高校生のとき1学年下だった松中優子という生徒に関する、あるエピソードを思い出す。
みずきは高校の時、寮生活をしていた。彼女が三年生になり、松中優子という「私たちの寮の中では間違いなくいちばん美人でした」という子がみずきに名札を預かってほしい、と言う。みずきは不思議がる、なぜ自分が彼女の名札を預からなくてはならないのか。それでも彼女は了承する。
松永優子が寮に戻ることはなかった。彼女は自殺してしまったからだ。
みずきは
「いないあいだに猿にとられたりしないように」と松中優子が最後に言った冗談が気がかりだった。
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なぜみずきは寮生活をしていたのか、なぜ名前が思い出せなかったか。
ラストでは明らかになりますが、村上春樹作品の中で、珍しくはっきりとしたオチです。そして、私個人的にとても好きなオチです。
このネタバレは、どうかご自身でお確かめになっていただきたい……!
それくらい傑作だと思います。
明日もいい日になりますよう。