吾輩は芥川賞を全部読む。

読んだ本の書籍レビューが主です。作家になりたい大学生。来年から働きます。

村上春樹と模倣

群像新人賞に送る原稿の推敲をしているが、あまりにも自分の望む水準に筆力が達していなくて愕然としている。

ここで一つ解説を加えると、群像新人賞とは、純文学の新人賞の一つで、過去にはW村上を輩出したことでも有名である。

その村上のデビュー作、ジャズ喫茶を経営する傍ら、深夜に執筆し、いきなり群像新人賞を獲得したのが『風の歌を聴け』である。

 

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

 

 この作品も含めた、『1973年のピンボール』や『羊をめぐる冒険』はのちの作品には見られない、感性あふれる筆づかいが魅力の作品。

物語世界を理論づけて構築するというよりも、どちらかといえば、感性の移り変わりは離散的なひらめきがぎりぎりのところで成り立っている印象を受ける。

 

しかしながら、先日Twitterでこんな画像を見つけた。

 

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村上春樹の『風の歌を聴け』が群像新人賞を取った時の、丸谷才一の選評だそうだ。

驚くべきことに、実際にこの村上春樹は日本文学の趣向を大きく変えることになる。

村上春樹以後の日本文学は、彼を介してアメリカ文学の空気を十分に吸って、そしてよりカラフルなものへと変容していった。(という印象を個人的に受ける。)

 

で、今回村上春樹のことを調べていたら、こんなことも見つけた。

 

Naomi Matsuokaの論文において、村上のデビュー作である『風の歌をきけ』がレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』のストーリーを換骨奪胎した上に成り立つことを指摘され、それを村上が認めている事実も指摘している。

(『長いお別れ』についてのネタバレはこちら https://www.tunacanprotein.work/entry/2019/10/02/021623      )

 

デビュー作が換骨奪胎って、日本の作家にしては結構興味深い。でも確かに、村上春樹の模倣については、芥川賞の選評でも指摘されている。

実際に村上のデビュー作『風の歌をきけ』は芥川賞候補になり、受賞を逃したが、審査員の一人であった丸谷才一は「アメリカ小説の影響を受けながら自分の個性を示さうとしてゐます。」という言葉を残している。

 

彼のデビュー二作目にあたる、『1973年のピンボール』も芥川賞にノミネートされたが、その際は大江健三郎も村上作品におけるアメリカ文学の表象に言及している。

 

「前作につなげて、カート・ヴォネガットの直接の、またスコット・フィッツジェラルドの間接の、影響・模倣が見られる。しかし他から受けたものをこれだけ自分の道具として使いこなせるということは、それはもう明らかな才能というほかにないであろう。」

 

 (http://prizesworld.com/akutagawa/kogun/kogun81MH.htm

 

今後、群像新人賞に応募しようとする人、いや新人賞に応募する人は古典の換骨奪胎を試してみてもいいのではないか。

まぁ、ためしに自分がやってみるか。

 

1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

 

 

 

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)