吾輩は芥川賞を全部読む。

読んだ本の書籍レビューが主です。作家になりたい大学生。来年から働きます。

『犬のかたちをしているもの』 ネタバレ

すばる文学賞受賞作の、高瀬隼子さんの『犬のかたちをしているもの』のより長いネタバレを書こうと思います。

 

短いネタバレはこちら→(https://www.tunacanprotein.work/entry/2019/10/15/222817

 

五大文芸誌(『文学界』『群像』『文藝』『新潮』『すばる』)というのがそれぞれ純文学の賞を毎年やっており、この五大文芸誌の文学賞は五大文芸賞と呼ばれたりもするとか。

まぁ、はやい話が、純文学の作家になりたい人たちの王道の登竜門なわけです。

 

この五大文芸誌の賞の中で、『文藝』『新潮』『すばる』の賞は三月三十一日締め切りで、発表も秋ごろと被っています。

この度は『文藝』が二作、『すばる』と『新潮』がそれぞれ一作ずつ受賞作がでましたが、この中で、私が最も芥川賞の候補に挙がる可能性が高いんじゃないかな? とひそかに思っているのがこの『犬のかたちをしているもの』です。

『文藝』が若い作家のW受賞で注目度も高かったかもしれないですが、私的には『犬のかたちをしているもの』のほうがおもしろかった。

やや、思想が堂々巡りをしている感のあるところがこの小説の欠点ですが、『産む』ということ。そして『女』であるということを描いています。

前のブログでも書きましたが、私はこの受賞者の高瀬さんの描く身勝手な男性像がとても好きです。

うわぁ……女性から見た男性ってこうなんだぁ……自分勝手で、思いやりがなくて、気持ち悪いな……と思えます。

彼女の描く男性像は、男の作家では描くのが難しいんじゃないかな。

そんなところも含めて、ぜひぜひ読んでほしい次第です。個人的には『文藝』よりもおすすめ。

 

 

 

 


すばる 2019年 11 月号 [雑誌]

 

 

 

 

 

『犬のかたちをしているもの』

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以下ネタバレです!

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 セックスができないわたしだが、郁也と付き合い始めて三年、同棲し始めて一年になる。

物理的にはセックスができるのだが、過去に卵巣の摘出手術を受けたわたしは、セックスをしている男の人が嫌いになってしまうのだ。

ある日、わたしは郁也にドトールに呼び出される。ドトールには郁也の隣にミナシロさんという女性がいた。そこでわたしは、ミナシロさんが郁也の子供を妊娠していること。そして二人の間には恋愛感情はなく、ミナシロさんは郁也からお金を貰ってセックスをしていたこと。ミナシロさんは子供をおろすのが怖く、また子供を産めば「やってみたけどダメでしたと言えるというか」という理由から、子供をとりあえず生んで、郁也とわたしに引き渡すということを提案する。

 わたしは答えをせずに、時々こうしてミナシロさんとお茶しようという約束だけして、その日はお開きになった。

 わたしは時々ロクジロウという飼っていた犬のことを思い出す。わたしはロクジロウを愛していたし、それと同じように母や父を愛している。ただ、郁也はわたしがロクジロウを愛するようにわたしを愛するが、わたしは郁也に対してそうではないことに気が付いている。

 ITのシステムを導入する会社に勤めているわたしだが、大学職員へ転職しようかも考えている。そんな中で、わたしはミナシロさんとドトールで会って話すことを続ける。ミナシロさんはいつもオレンジジュースを飲んでいた。

 職場の笹本さんの赤ちゃんと犬の写真が、手から手へと回される。わたしはその赤ちゃんの、名前をほめるが、全然興味は沸いていない。わたしは無条件に子供がかわいいと思える人だったら良かったのかな、などと考える。わたしは郁也とミナシロさんと、その子供を笹本さんに相談することも考えていた。

 笹本さんはわたしと仲良かった上司だが、課長と不倫していた。飲み会で彼らの不倫話で盛り上がっていた時、わたしが心底どうでもよさそうな顔をしていたことから、笹本さんと仲良くなる。笹本さんの子供は、課長の子供でもあった。課長は既婚者で子供もいる。

 わたしは転職を考えている大学に訪れる。そこには、大学生が、大学の相談窓口でわめいていた。

 実家に帰っても、わたしは赤ちゃんのことが頭にあり、「そういえば、あの時はビールのまなかったねぇ」などとのちに言われることを想像し、アルコールを断る。

 そうして私は、二十歳で卵巣の摘出手術を受けて入院中に、友達のお父さんに手を握られて、勝手に同情されたことを思い出す。記憶は連鎖して、中学の時の体育の授業で、男性教師に体操着を忘れ、ブルマーで授業を受けさせられたことも思い出す・

 ミナシロさんは郁也と入籍して、おなかがわかるほど大きくなっている。彼女は今、蹴った、などどいって笑う。

 そんなときに、母からおばあちゃんが危篤だという電話が来て、私は焦る。赤ちゃんがミナシロさんのおなかからもうすぐ生まれるというのに、わたしのおなかはぺったんこだからだ。

 それでもわたしは決意して、故郷の四国に向かう。夜遅かったからタクシーを乗り継いで、京都までいったところで母からメールがくる。

〈ばあちゃんの意識が戻りました。一命をとりとめたそうです。なので、無理に帰省しなくても大丈夫。〉

 子供が生まれたその日、私は普通に働いていた。郁也から、男の子が、生まれたというラインが来た。子供の名前は既にミナシロさんが決めていた。心といった。

 わたしがその心くんを抱く日はこなかった。ミナシロさんがやっぱり自分の子供は自分で育てたいといったからだ。ミナシロさんは心くんを子のない親にはしたくないといい、郁也に「どうかな?」と持ち掛ける。「どうかなって……」といったのはわたしだった。

 わたしの子宮の治療が終わり、もう三か月で生理がくるという。わたしは、郁也をセックスに誘うが、失敗してしまう。わたしは、郁也がそばにいてくれるか不安になる。きっとこうしてまたわたしはセックスに誘うのだろうと思う。

 

 

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