新潮の11月号に、新潮新人賞の当選作が乗っていました。
当選作は、「暴力」「介護」「戦争」をテーマにした作品で、新潮らしく文章の密度が濃いですが、まだ読み終わってません。
今回はその選評が面白かった件について。
選考委員さんたちが、本気で臨んでいるという姿勢がびしびしと伝わりました。
紙面からでも火花ちるやり取りが想像で切るようですので、ぜひ一度、新潮11月号の選評を一読おすすめします。
今回の候補作は『ごめと碑』『ガネーシャの娘』『黒い編み目、白い編み目』『ノンタイトル』『尾を食う蛇』です。
このうち受賞作は『尾を食う蛇』なのですが、『黒い編み目、白い編み目』そして『ノンタイトル』において選考委員の意見が見事に割れている点が面白い。
「(前略)……浅ましいにもほどがある表現のてんどんで、いくら何でもこれがそのまま書かれているわけではないだろう、いつこのメタ装置が起動して、読物として成立するのだろうと読み進めたが、そのままだった」
「なぜこの作品が最終選考に残ったのか? 全く理解できない。」
……これぞ酷評の見本というべき酷評でしたね。ここまで言い切れるほどの作品ということで、逆に気になってしまいます。
私は別に川上さんの作品でそこまでいい、と思ったものはすくないので(これは間違いなく好みの問題で、川上さんの作品が文学的に非常に高い所にあるとはおもいますが)
そこまで言うかね? と思ってしまいますが……
次に注目すべきは田中慎弥さんの選評。
「石原都知事のためにもらっといてやる」発言が話題になりましたが。受賞作の『共喰い』は面白いのでおすすめ。まだ若き日の菅田将暉が映画に出演してもいます。
「私がもらって当然」 芥川賞の田中慎弥さん(12/01/18)
以下田中さんの選評より。。。
「今回一番いいと思ったのは『ノンタイトル』だった。この作品に〇をつけたと私が言った瞬間に某選考委員が漏らした愛情あふれる失笑及び、その後の各委員からの全否定の雨霧は気持ちよく感じられるほどで、ほとんどこの作品への称賛だ、といいたいところだが……」
……
……
未映子に笑われてる田中さん可哀そう!
その後も全否定を受けたとのことで。
いやーでも、田中さんが肯定する作品なら、がぜん読んでみたい気持ちがする。選評や本の好みとして、田中さんの面白いと言ってた本が、私も面白いと思うことが多かったので(川上未映子は逆だった)よんでみたいなぁ『ノンタイトル』
未映子が失笑する姿と、全否定される田中さんの姿を見てみた過ぎる。イメージそのまなんまだもの。
というか、いつも思うのだが、新潮新人賞は選評が厳しい。
それだけ力のある作品を出したいということなのだろうが、最近は芥川賞から遠ざかっている気がする。(あ、でも『百年泥』がでたか)
そしてもう一つの最終候補作品『黒い編み目、白い編み目』
において、中村文則さんはこう語っている。
「川上選考委員とともにこの作品も受賞にと粘ったが、かなわなかった。怒りと呆れを通り越し、戦慄した」
「こういう作品を受賞させることができなかったのは間違っている。はっきり言う。あり得ない」
……未映子だけが押したならともかく、中村文則さんも押したとなると、ぜひ読みたい。というか、『尾を食う蛇』よりも『黒い編み目、白い編み目』の方が面白そう……
どっかの文学フリマとかに出ていないものかな。ぜひ読みたいのだけど……
とにかく私にとっては雲の上の話ですね……
まぁ、全然見られないだろうけど……
とにかく選考委員たちのバチバチが面白い新潮11月号の選評。ご一読を。