吾輩は芥川賞を全部読む。

読んだ本の書籍レビューが主です。作家になりたい大学生。来年から働きます。

宇佐見りん『かか』 ネタバレ 【傷を抱えた少女は熊野へ旅立つ】

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宇佐見りん「かか」

 

 

≪一分でわかるネタバレ≫

小学生のころに浮気のため家を出た父(とと)。主人公で語り手であるうーちゃんと母(かか)の境界線は非常にあいまいで、かかの痛みをうーちゃんは自分のことように感じていたが、やがてかかが「はっきょう」すると、うーちゃんはかかのことを徐々に疎ましく思うようになり、かかが子宮の除去手術をする日に旅にでる。そして旅先から、うーちゃんのもう一つの世界であるSNSに「母がなくなりました」と嘘を書くのだった。

 

 

 

文藝の発売日に蔦屋書店に行って読みました。もうこのニュースを見た時は悔しくて悔しくて、たまりませんでしたわ。才能のある人はいいですね。私にも才能が欲しいです……

しかも今作の受賞者は二人とも若い。その上、顔も整っていらっしゃる。

はぁ(*´Д`)

神様は残酷なものですね……私みたなブオコトは来る日も来る日も誰に読まれるあてもない小説を書きつづけ、そのうちにそれもやめて、あとは働いて、働いて、死んでいくんでしょう……

閑話休題

 

 

さっそく二十歳の新鋭、宇佐見かかのデビュー作「かか」を読んでみました。

まぁ感想をつらつらと書いた後でネタバレに入りたいと思うのですが、最近の純文学の新人賞は、本当に個人的な体験を深く掘り下げたものが多いよね。

っていうか、芥川賞もその傾向があるような気がするよね。

ちなみに今回の文藝賞の受賞作、どちらも極めて個人的な体験を描いたものです。もちろん、その個人的な体験は、普遍性へとつながっているのですが、ワガママな一読者としては、もっと大きな物語があってもいいように思えます。

個人ことを描いた作品が多すぎて、少し息が詰まる感じがどうしてもします。

例えば、大分前の芥川賞で、高樹のぶ子いとうせいこうさんの『想像ラジオ』を押していましたが、あのような、広く世界と関わりのある作品も読みたいなと思いますね……

まぁ、そのような作品を手前で駆けるように努力していく所存でございます。(たぶん、一生かけないのでしょうが……)

 

 

『かか』は、かか弁という作者オリジナルの、独特の文体を使ったことにより、狭い世界の個人の痛みが、より伝わってきたのかな、と思います。ただ、磯崎憲一郎は「完全に失敗している」と評していましたが……

良い作品です。読書開始10分が非常に退屈なことと、読み手を選ぶことを除けば。

 

うーーん、どうしても「かか弁」がつまらない人にはたまらなくつまらなく響くでしょうから、読み手は選ぶでしょうね……

 

恐らく、うーちゃんと似たような痛みを抱えている人にはこの本はバイブルになりえるでしょうが、そうでない人を巻き込む、例えば『コンビニ人間』のような力があるかと聞かれれば、疑問です。

ですが、間違いなく才気は感じさせる作品なので、宇佐見りんの『かか』、読んで損はないと思います。

 

 

 

 

 

【より立ち入ったネタバレ】※うろ覚えで書いたので、後でまた書き直します。ご容赦(土下座)

 

 

うーちゃんは母(かか)が子宮を取り除く手術を受ける日に、熊野に旅立ちます。

その旅立ちに際して、うーちゃんはかかの生い立ちや、これまでのかかの家族へのふるまいや自傷行為を思い出すのでした。

かかは父(とと)に浮気されて家を出ていかれ、うーちゃんが中学生の時に発狂してしまいます。かかの腕に自傷行為の後を見つけたうーちゃんはまるで自分の腕が傷つけられたような痛みを感じてしまいます。

そんな思いをうーちゃんはツイッターに書き込むのでした。「ラビ」と名付けられたアカウントでは、大衆演劇のファンとの、非常にクローズドな狭い、フォロワーも二十人未満なもう一つの世界で、うーちゃんは温かさを感じています。

ある日、うーちゃんが大衆演劇の終わりに携帯を見ると、かか、から何件もの着信履歴が付いています。聞いてみると、彼女が飼っている犬のホロを逃がしてしまったとのことでした。

うーちゃんの弟であるみっくんはそんなかかを怒鳴り、感情をぶつけているのが電話越しに聞こえます。その犬のホロは、父(とと)と引き換えのようにかかが連れてきた犬でした。

家に帰ると、六人分の生姜焼きがひっくり返してありました。うーちゃんはかかの祖母と祖父、そしてかかの姉、夕子の子である明子と住んでいますが、その日かかは、のけ者にされて一人、オペラに連れて行ってもらえなかったのでした。

「でもおまけで産んだって言った。夕子ちゃんのおまけで産んだって言った」

かかの調子が悪いときは、彼女は祖母に言われた言葉にとらわれて、思考がいつまでも愛されていない自分にしかいかなくなってしまいます。

ある日、父(とと)が家を訪ねてきますが、うーちゃんは彼の遠慮ない男の視線に不快感を感じずにはいられませんでした。

ある日、かかは、手術で子宮を取り除く必要があるとどこか勝ち誇った様子で家族に告げます。

その日から、かかはうーちゃんの家事に難癖をつけ始めるのでした。

熊野にいるうーちゃんは、ついにお母さんの手術の時間を迎えます。彼女は、本来ならば命の危険などほとんどない手術なのに、ツイッターにお母さんの手術は、命の危険を伴うものだと嘘をつきます。そしてお母さんの手術の二時間後、彼女はツイッターに母は死んだ、と嘘の投稿をします。すると彼女のアカウントに、励ましのコメントが届きますが、それをみたうーちゃんは恐ろしくなって、アカウントを消してしまいます。

そして熊野の山の中で、うーちゃんはかか、かかと叫び声をあげ、母を思うのでした。

 


文藝 2019年冬季号