吾輩は芥川賞を全部読む。

読んだ本の書籍レビューが主です。作家になりたい大学生。来年から働きます。

小説レビュー『きょうも上天気』~「涼宮ハルヒの憂鬱」や「ラムちゃん」の原点はどこか寒気のするSF~

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星新一賞が明後日締め切りです。

昨年の学生部門の大賞作『創訳する少女』はなかなか良かったですね。

私もあんな作品を書きたく、目下勉強中です。。。

今回紹介するのは、ある意味で『涼宮ハルヒの憂鬱』や『ラムちゃん』の原点である小説、『きょうも上天気』です。

短編ですが、寒気のする切れ味するどい名作です。

 

【あらすじ】※ネタばれ含みます。

ある村に住む人々は、いつもたいていモグモグと口を動かし、何か意味のないことを考えようと努めています。

それはアントニーという少年のためです。アントニーという少年は念力を使うことができ、人の心がよめ、自分の気に入らないことがあると、容赦なくその超能力を使う男の子です。

アントニーは何か気に入らないことが有ると、直ぐに念力で動物を殺したり、トウモロコシ畑に埋めたりしてしまいます。

昔はエミー伯母さんの言うことは聞いていたのですが、ある時にエミー伯母さんがアントニーを強く叱った時、アントニーは彼女に念力を使い、その時以来エミー伯母さんはどこか壊れたようになってしまいました。

そしてその事件以来、アントニーは肉親にさえもその力を使うと、一層恐れられるようになったのです。

村には四十人ほどしか村人がいなく、そして彼らの住む村は世界と隔絶されています。だから酒も数えるほどしか残っていないし、食べ物も自分たちで自給自足するしかありません。

村人たちはアントニーに心を読まれ、彼が気分を害すること、そして彼が何かよからぬことを考えることを恐れ、どんな天気であっても「いい」と笑って言います。アントニーに何かを聞かれて、天候をコントロールされることを恐れてのことです。彼が天候をコントロールしても、決して望む結果にならないことを村人全員は知っています。

村人たちは本心を決して見せないように、アントニーに行動させないように振舞っています。

そんな中、テレビ大会が開かれます。

村中のみんなでテレビを見て、そしてお酒を飲んで食事をするというイベントです。

テレビ大会はダン・ホリスという男の誕生日も兼ねていました。

テレビ大会が始まり、ピアノの音が響きますが、歌声は聞こえません。アントニーは歌が嫌いだからです。

そんな中、ダン・ホリスという男が酒を飲みすぎてしまい、自分がプレゼントとしてもらったレコードを抱きしめながら、これをかけて欲しいと言います。

アントニーの機嫌を損ねることを病的に恐れる村人たちは、そんな恐ろしいことはできない、と拒否します。

すると、ダンは「おお、神様!」と叫んでしまいます。

まわりの村人たちは、「あんたがそんな風にしゃべるのもいいね」などとアントニーを気遣いながらもダンを抑えようとしますが、ダンは止まりません。

「自分のレコードもかけられないのか……」

「あぁ、神様……」

アントニーはついに部屋に入ってきて、一座は凍り付きます。

アントニーは「ワルモノ」というと、ダンを誰も想像できないような姿に変え、トウモロコシ畑の下の、深い深いお墓に投げ込みました。

その後はアントニーが見守る中、みんなでテレビの鑑賞が始まります。

小さなテレビで、後ろの人々は画面が見えませんが問題ありません。

テレビには何も映っていないからです。

みんなは口々に言います。「いい番組だね!」「とってもすてきだわ」

アントニーの機嫌を損ねないためです。

そして村がどこか考えても仕方のないことなのです。三年前、この村はアントニーがあることをしてから世界から隔絶されてしまいました。アントニーがこの村をどこかに移したのか、それともこの村を残して世界が滅ぼされてしまったのかは定かではありません。

ある日は雪が降りました。それでも村人たちは、「いいお日和」だね、と言い合いました。