吾輩は芥川賞を全部読む。

読んだ本の書籍レビューが主です。作家になりたい大学生。来年から働きます。

小説レビュー『むらさきのスカートの女』~令和初の芥川賞~

f:id:tunacanprotein:20190926161333p:plain



令和初の芥川賞を受賞された今村夏子さんの作品です。今村さんの作品はほかに、新興宗教にはまっていく親の元で育つ子供を描いた『星の子』や少し風変りな少女を描いた『こちら、あみこ』のように少し変わった人間を描くのが特徴です。

 

今村夏子さんは、通常であれば社会から受け入れられない個人を、厭味ったらしくなく、むしろどこか哀愁や一種独特な可愛げのある印象を読者に残すように描くのが本当にうまいです。

 

芥川賞をめでたく受賞された、『むらさきのスカートの女』にも、社会とは少し外れた人物が二人出てきます。それは「むらさきのスカートの女」と職場では「権藤チーフ」であり「黄色いカーディガンの女」でもある主人公の「わたし」です。

わたしはむらさきのスカートの女に憧れ、友達になりたいと思っています。

 

 

~あらすじ~※ネタばれ含みます。

わたしは近所に住む「むらさきのスカートの女」にあこがれ、友達になりたいと思っている。

 「むらさきのスカートの女」とは、ぱさぱさとした黒髪を肩まで伸ばし、いつも紫色のスカートを履いて近所をうろついている女のことだ。

「むらさきのスカートの女」はその容貌から近所では有名な存在で、公園の、いっつも決まったベンチで座ってクリームパンを食べている時に、子供からからかわれたりもする。わたしは「黄色いカーディガンの女」だが、「むらさきのスカートの女」とは違って有名でも何でもない。

「むらさきのスカートの女」と友達になりたい私は、彼女は職を転々としているのに目をつけ、彼女がわたしの職場にくるように、いつも「むらさきのスカートの女」が座るベンチに求人誌を置いておく。

わたしが求人誌を仕込んで三か月ほど経ったとき、いくつもの面接不合格を経た「むらさきのスカートの女」はやっとわたしの職場の面接をうけ、ホテルの清掃員として働くことになる。

「むらさきのスカートの女」は、最初は挨拶こそできずに周りからもからかわれていたものの、要領よくホテルの清掃員の仕事を吸収し、周りとも打ち解けチーフにも昇格する。

わたしは「むらさきのスカートの女」と友達になりたいが、声をかけられない。仕事をこなせるようになった「むらさきのスカートの女」は自身がついたみたいで、からかわれていた子供たちと一緒に遊んだりする。

子供たちと一緒に汗だくになって遊んでいた「むらさきのスカートの女」を眺めていたわたしは、なぜだろう、自分が走りまわったように喉が渇く。

「むらさきのスカートの女」は要領よく仕事をさぼるようになった。また彼女が仕事ができるようになっていくにつれて、見た目もより女らしく、可愛げのある見た目になっていく。そんな中、「むらさきのスカートの女」と職場の所長が付き合っているのを聞いて、わたしは調査をする。

「むらさきのスカートの女」は所長との逢瀬を繰り返している中、ホテルの備品が盗まれ、「むらさきのスカートの女」の小学校の近くのバザーで売られるという事件が起こる。

厚遇されていた「むらさきのスカートの女」は一転、妬みの対象になる。

エレベーターで同僚に責められた「むらさきのスカートの女」はついに職場からとびだして戻ってこなかった。

わたしが「むらさきのスカートの女」のアパートに行くと、そこには所長と言い争う「むらさきのスカートの女」の姿がある。

所長は「むらさきのスカートの女」の自白するようにせまるが、「むらさきのスカートの女」は犯人は自分ではないと言い張る。言い争いの中、所長は二階の窓から転落してしまった。

 

動かない所長を目の前に混乱している「むらさきのスカートの女」にわたしが近づいて、倒れた所長を見る動作をし「所長は死んだ」と嘘をつく。

 

「むらさきのスカートの女」は突然現れた「権藤チーフ」に混乱しながらも、「権藤チーフ(わたし)」の話を聞いて、言われた通りに、わたしが用意していた経路で逃げる。

わたしは「むらさきのスカートの女」の二人での逃亡生活を夢見て、落ちあうはずのホテルに行くが、そこに「むらさきのスカートの女」の姿はなかった。

わたしが「むらさきのスカートの女」が前にいつも座っていたベンチに座り、クリームパンを食べていると肩を叩かれる。

「黄色いカーディガン」の女をからかった子供たちが逃げていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「むらさきのスカートの女」と「わたし」が重なるような描写があり、少しファイトクラブに似ていますが、二人が同一人物であると考えると無理があります。

したがって、これは「むらさきのスカートの女」に憧れていたわたしの物語です。

今村夏子さんは本当に、芥川賞を向きというか、純文学向きというか、社会から外れた人を嫌みなく、かわいらしく描くのがうまいです。

 

ちなみに、今村夏子さんは処女作がデビュー作で、書けない時期に作家の西崎憲さんから、「ご自分の楽しみのために書いてください」というメールを受け取ったそうです……

 

羨ましい!!!!

 

やはり作家は才能なのか……と考えるとへこみますが、まぁ僕も三十手前くらいまでは作品投稿を続けようかと思います。

 

今日もいい日になりますよう。

 

 

 

 

 

 


【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女