吾輩は芥川賞を全部読む。

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小説レビュー『盤上の夜』 ~碁を題材にした宮内悠介の代表作~

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星新一賞https://hoshiaward.nikkei.co.jp/

の締め切りも近いので、SFの短編を読み返してみた。

 

盤上の夜 (創元SF文庫)

盤上の夜 (創元SF文庫)

 

 

『盤上の夜』は宮内氏の代表作にしてデビュー作。氏は仕事が忙しすぎてうつ病になりかけたところでこの受賞の報を聞いたらしい。10年以上創作を続けた上での受賞ということで、全く芽が出ていなくても、こんな作品をかけるようになるんだ、と勇気の出るほど完成度が高いと思う。

 

【あらすじ】※ネタばれ含みます。

中国旅行の最中、誘拐により四肢を失った由宇という美しい少女は、慰めの身になりながらも、碁を覚えることによりその状況を脱することができた。

日本に帰国した由宇は、相田という元プロ棋士に、手足を失った自分の代わりに碁を打ってもらうことにより、一躍、日本囲碁界の注目の的となる。

しかしながら、彼女の活躍期間は長くはなかった。最後の方には対局中に妙なうわごとを呟いていたという。

そのうわごとの正体とは、純粋な思考の末にもたらされた、言葉にならない感覚だった。

手足を失った彼女は、通常の触覚を失う代わりに、碁盤の上に神経が通うようになっていたのだ。だから彼女は、対局中に痛みを訴えることもあったという。

だから彼女は今だ言い表せぬ感覚を言葉で表そうと、外国語の勉強を始める。しかし、それも身を結ぶことはなく、由宇は表社会から消えてしまった。

ずっと由宇を支えていた間は、よく四肢を失った由宇と肉体関係はあったのか、と聞かれるという。

しかし相田はそれを否定しながらも、それよりも深いつながりが彼女とはあったのだと語る。

それは肉体的なレベルではない、思考の、精神のつながり即ち、盤上でのつながりだった。

最後は消えた由宇の入院した病院をつきとめ、相田が駆け付け、二人は彼らにしかできない方法で、愛とも絆ともいえぬものを確かめるのだった。

 

【雑感】

囲碁の才能がありすぎて、囲碁盤に魂が宿ったらどうなるか、を突き詰めてドラマにした良作。

囲碁盤に神経がいく、という発想から

→それなら手足がない方が亡くなった感覚を補うという意味で自然なのでは?

という発想をしたと思うが、その手足を無くす部分もドラマとして有機的に機能して、細部の創りこみもよい。

最後に、肉体的な愛を超越した形で、精神のつながりをこの作品の特性を生かして描いているところも完璧。

 

私もこういう作品をかいて、星新一賞受賞したいなあ・・・・・・・・